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2014CA中韓留学体験ワークショップレポート

 3月2日、30時間近く波に揺られ続けて、やっとのことで青島に降り立った時の私の最初の感想は「やっぱり空は綺麗じゃないな。というかなんか全体的に白いな、空気が。」というものだった。比較的近くにあるであろうビルも霞んで見えた。やはりそこには、予想通りというよりかは、自分が物心ついた時からメディアによって与えられた印象そのままの中国がその広大さを自慢げにして横たわっているような気がした。道路わきに並ぶ露店、昼間から談笑をする男たち、道路を縦横無尽に駆け回る子供そしてクラクションを鳴らしまくるバスの運転手。私はやはりこんな風に少しだけ秩序が欠けているところが、中国らしくて魅力を感じたが、それと同時にこの私の先入観・固定観念を豪快に良い意味で破ってほしかったと、僅かばかり落胆もした。

 しかし、2日目に入ってやはりこれらの観念は間違いであったと気づかされた。もちろんこれら観念の中には、中国人の我々日本人に対する反日感情というものも含まれていたが、会う人全てから私たちに対する敵意を感じなかったのだ。私は一人で韓国を回った経験から、中国の人も個人の日本人に対して反日感情を持っていたとしても露わにしないことは、いくらか予想はしていたが、まさかたまたま道を尋ねた人に「日本人か。青島は何もないけど楽しめよ」と半沢直樹を演じる堺雅人ばりに印象強い低い声で言われるとは全く想像していなかった。また、イオンのフードコートで対応してくれた店員は、小籠包のようなものを買った私たちに、中国語で何を言っているのかよくわからなかったが、その身振り手振りで「中は熱いから、気を付けて食べなさい」と注意してくれた。極めつけは私たちを案内してくれたガイドさんや海洋大学で出会った同年代の友人たちだ。ガイドさんは異国の地に初めて来て、分からないことだらけの私たちを誠心誠意サポートしてくれた。彼女は日本語も堪能であり、その場を和ませてくれる快活な笑顔でいつの間にか私たちの会話の中心にいることも多かった。また海洋大学で私が1対1で会話をした王さんとは、音楽の趣向が私と似ており大いに会話に花を咲かすことができた。この会話をしている間は、少なくとも私は日中間の軋轢など微塵も気にならなかった。

 このような経験をして気が付いたのは、当然のことであるが日本について知識が多くなれば多くなるほど、日本に対する彼らの感情は和らいだものになっていくということだ。海洋大学の王先生の話には、「互いの尊重」というキーワードとして用いられていたが、まず尊重するためには相手のことを知ること、さらに言えば相手のことを知ろうとする積極的な態度が必要となるだろう。私は中国という国に関して人並み程度の知識しか持っていなかった。ちょっと前まで「中国とは?」と問われると、恥ずかしげもなく自信満々に「デカイ!ヒトオオイ!」とバカみたいに答えられるくらいにしか情報を持っておらず、おまけにそのことに対して危機感も全く持っておらず、能天気だった。しかし、隣国であり両国の経済発展にはお互いに切っても切れない存在である中国のことを知ることは私にも、そして日中両国にとっても少なからず利益をもたらすだろうと考える。相手の歴史的背景、文化そして民族性など客観的な立場から情報を得て(知って)、その後それらを自分の中でかみ砕いて理解できるものには極力理解するように努め、それでも理解しがたいものも相手と自分たちとの相違点を再確認し受け入れていく。この過程を段階的かつ反復的に踏んでいくことで、相互理解という形で日本と中国の距離を縮めていくことができるだろう。

 そして、もちろんこの考えは日韓の関係にも当てはまる。単純に見れば日中と日韓の関係はかなり酷似しているとも言える。これも王先生がおっしゃっていたことだが、「政冷経熱」という単語が両者ともぴったりだろう。韓国も経済からの観点で言えば日本とは良い関係もあり、また最近の韓国企業の成長に日本企業が押されている感は否めないが、言い方を変えれば競争に熱が加わり両者にとって良い刺激となるのかもしれない。また企業視察で訪れたルノーサムスンでは日本の日産と技術協力しているという話も聞けた。ただ、政治の観点から見れば竹島問題、日本国首相の靖国神社参拝問題さらに従軍慰安婦問題など様々な障壁が存在し両国の関係は改善されることは当分ない言える段階にまで冷え込んでしまった。また日本と自国の関係に対する注目度は中国よりも韓国の方が非常に高いと思われる。歴史博物館にある、鳥が飛んでいないとそれが動画だとは分からない竹島のライブ映像、繁華街にある朝鮮通信使の像などからもそのことが分かる。

 しかしながら、個々人の関係においては中国と同様に韓国でも日本人に悪い印象を持っている人はあまりいないと考えられる。韓国でも私たちは多くの現地の人びとと交流したが、その全員が心優しく接してくれた。その中でも東義大学で出会った金さんは、ずば抜けて面倒見がよかった。大学での交流会の後もわざわざホテルまで来てくれたにもかかわらず1時間もロビーで待たせてしまった私たちに文句の1つどころか嫌な顔もせずに、その後数時間にわたって国際市場の周辺を案内してくれた。彼は日本語も上手で、彼との会話には私が日本人の友人とするそれと何の違いもなく、少しでも気を抜くとまるで日本の友人と会話しているような錯覚に陥りそうになった。彼には夜遅くまでよくしてもらい、韓国のゲームなどを教えてもらい、連絡先を交換したうえで別れた。彼のおかげで私の韓国に対する印象はまた良い物へと変わった。私は昨年の夏に一人で韓国を回るまではメディアから得た情報の中だけの韓国しか知らず、少しばかり恐怖心のようなものを持っていた。昨年、実際に現地に赴くことでそのような感情は排することができたが、やはり韓国人と会話するときには表情や態度には出さないが、どこか心の中につっかえたものがあるような違和感を持って接していた。しかし、今回彼と長時間接するうちにいつの間にかその違和感も払拭されていた。彼ひとりとの関わりがここまで1つの国に対する印象を変えることができるのならば、私にも中韓の人びとに誠意を持って接することで彼らの中にある日本という国自体に向けられた反感や嫌悪感を取り除くことができるかもしれないと考えるようになった。これは国全体という観点からは小さすぎる友好関係だが、国というものは個人の集団が社会に組み込まれたものであるから、このような小さい友好関係も少なからず両国の関係に影響を与えていると考えれば、非常に意味のあるものだと考えられるのではないだろうか。

 私たちは自分たちの知らない、そして容易には知ることのできない世界の情報はほとんど、メディアやインターネットを介して入手する。そして、比較できる情報を持たない私たちは、その情報が真実であると思い込むようになる。大学生にもなるとそれらの情報全てが正しいわけでは無いと気が付いてくるのだが、1つの物事の正誤を真に判断する多大な労力そしてそれら情報自体の量の膨大さ故に、私たちは自身のメディア・リテラシーの力を存分に発揮できない。そうして冒頭で述べたような先入観などが形成されていく。しかし、私たちが今回そうしたように、自分で体験して、自分で判断することで物事に対する自分自身の接し方を決めることができる。今回のワークショップを通じて私は、中韓の文化に触れ、それぞれの国の歴史に対する考え方を知り、現地の人々と交流を持つことで改めて3国の相違点を確認することができ、そのうえで彼らを理解し、受け入れ、尊重することができるようになったと感じることができる。思うにこのような経験を通して互いを知り、尊重しあう機会を作ることも今回のテーマである共通善の一部なのかもしれない。このように貴重な体験をする中で、中韓に対する意識が私の中で変わっただけでも今回このワークショップに参加して良かったと感じる。

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