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共通善とは

 日中韓、この三国の交流は長期にわたる。栄えた国が他の国に文化を継承していた時代、手をとって協力しあっていた時代、一方の国が他方の国を抑圧してきた時代、といったようにこの三国の間には親密かつ複雑な時代背景があり、それらに基づく現代の諸問題は一朝一夕で解決するものではない。また、国間のみならず個人が相互に持っている嫌悪感や反発的感情も簡単にぬぐいきれるものではない。しかし、今回、話題の渦中にある現地に直接赴いて生の声を聞くうち、私の認識と日中韓の現状に若干のギャップを感じた。また、それが今回のテーマ「共通善」をみつける手がかりとなった。

 まず初めに、中国・日本間における「共通善」について、私なりの考えを述べたい。中国では、一昨年大規模な反日デモが起こり、多くの日系企業のみならず現地の日本人までもが損害を受けた。今回私達が訪問した青島にある日系企業イオンも例外ではない。私は経済学部所属ということで、アジアの経済に特に興味があった。新聞や雑誌等で調べた限りでは、日本は中国にすでに見切りをつけ、他の途上国に市場を移転させているのだと思っていた。確かに、大気汚染、反日デモが起こり、労働賃金が上昇している中国とビジネスパートナーであるメリットはすでに無い。しかし、今回現地で聞いた生の声は異なっていた。日系企業の代表によると、「中国には長年培ってきたノウハウがあり、距離も近く、納期が読みやすいので日本にとって非常に都合がよい。生産率も高く、中国との関係は切れない。今他の発展途上国に進出しているのはチャイナ+1の考え方からである」とのことらしい。政治面で衝突がある状況で、経済面でさらに関係を断ち切ってしまうことがあれば一生和解できないのではないかと危惧していたが、取り越し苦労だった。私が知らなかったメリットを中国は多く持っており、現地で働く人は中国とのパートナーシップを非常に大切にしていたのである。一番の問題は、一方的なメディアの情報を鵜呑みにして、中国に見切りをつけ関係を断ち切る方がいいと思い込むことだと知った。また、GDPが日本より高い中国に支援する日本政府を批判する声が日本では多く見られるが、実は国民一人当たりで換算すると中国は日本人の十分の一程度しかGDPがない。新聞やネットの「GDPが日本より多い中国に支援する政府」といった大きな見出しだけで物事を判断し、中国を嫌いになっている日本人も多くいるのではないだろうか。「共通善」の定義は複雑でわかりにくい。しかし、あえて単純明快に「相互に都合がよい状態」と定義するならば、時に生の声を聴き、時にメディアを通し、できるだけ数多くの情報を集めて自分なりに取捨選択し理解することが非常に大切であると実感した。

 また韓国でも、多くの共通善への道を模索することができた。現在、韓国・日本間における問題は年々ヒートアップしているように思える。韓国側が、サッカーの試合で「竹島・独島」を自治領であることを世界にアピールしたり、フランスの漫画の祭典で従軍慰安婦をモチーフにした漫画を展示し政治的メッセージを発信したり、といった、政治・スポーツ・文化を混同させた行為を度々行っていることは多くの日本人にとって周知の事実だと思う。私は、韓国が非常に歴史や領土にこだわり、どんなイベントでもそれを全面に押し出すことに理解を示せず、大きな疑問を抱いていた。しかし、実際現地に赴いて、歴史的建造物をみたり学生と交流したりするうち、日本・韓国間における考えや文化の違いを知り、少しだが理解できるようになった。韓国の釜山には朝鮮通信使の絵や像がいたるところで見られる。また、李舜臣などの韓国人にとって英雄である人物の像や墓もあった。そこで私は、釜山にある数多の歴史的建造物や絵画は、すべて日本と関わりがあるものであることに気付いた。おそらく、日本にとって、韓国との交流や闘争は教科書の数ページ程度の歴史であるのに対し、韓国にとっては、教科書何十ページ、もしくは今なお報道し続けなければならない程の重要な意味をもつ大事件なのかもしれない。恥ずかしい話、朝鮮通信使を私が知ったのは高校三年生の模試の時である。同じ歴史でも見る側によって解釈や重要度は大きく異なる。そう思うと、韓国が日本人の考えるよりも歴史に非常にこだわる理由も理解できるし、日本人ももう少し関心を持つべきだと思う。逆に韓国人も、政治と歴史を切り離すのがフェアであるという日本の常識も考慮する必要があると思う。相手を理解することと、相手の条件を鵜呑みにすることは違う。お互い相手の国や思想について理解したうえで、主張を言い合うと解決の糸口も見えるかもしれない。またそれが「共通善」につながると思う。

 一週間の中国韓国の訪問を通して、「共通善」とは、「知ること・理解すること・伝えること」だという結論にたどりついた。現在、世界中でマスメディアによる情報が氾濫している。日中韓の関係が今日のようにこじれたのは、相互誤解や過剰報道によるところもあるだろう。ネット上では、多くの心もとない記事、かきこみを見かける。そして、その記事は、とあるニュースを見た人がそのニュースを頭の中で再構築し、それを自分の言葉で発信したにすぎない、いわば模造品なのである。もし、私たちが三国の言葉を完璧に理解することができたなら、真実に一番近い情報をくみ取り理解につなげていけるだろう。また三国の言葉を自在に操り伝えることができたら、微妙なニュアンスの変化によるこじれは今より少なかったと思う。中国・韓国に訪問し、現地の学生と交流する中で、彼らの日本語の流暢さに驚いた。またとある学生は「日本との歴史についてもっと深くしりたいから日本語を勉強している」と述べていた。日本に対して悪い感情を抱く人も多い。しかしそれ以上に良い感情を抱く人、より理解しようと努める人も多いことを知った。それだけでも非常に大きな収穫だったと思う。また、市場などで現地の生活や食にふれ、日本と似ているところを多く発見し、色々な角度から三国の近さに気付いた。帰国し、日常に戻った後、中国韓国に関する数々のニュースをみた。中国では相変わらずPM2.5が蔓延し日系企業は眉をひそめている。また韓国では、竹島・独島のLIVE映像が主要施設で放送され、毎日のように従軍慰安婦問題が騒がれ続けている。しかし韓国中国を訪問し、両国に日本との関係改善を求める人が多くいることを知った今では、ニュースを見たときの心の在り方が変化していた。ニュースもすごく身近に感じたし、それによってまた両国を嫌いになる人が増えると思うといたたまれなくなった。またネットで中国韓国をたたいている人の意見に対し、おかしいと感じるようになった。帰国して研修内容を話した私に対し母が言った「こんな風に文化を体験したり、若者同士が交流したりすることによって、相互に理解を示していけば、何十年後かには、わだかまりがとけて三国が手をとりあっている姿が想像できる」という言葉が忘れられない。本当にその通りである。今回の研修のテーマである「共通善」はおそらく日本の机上で考え続けても一生答えにたどり着かないと思う。私は、フィールドワークを通し、多くの人、モノと触れ合って少し「共通善」に近づけた気がした。これからは、もっと中国韓国について知り、発信し、微力ながらも三国関係の修復に協力したい。10014700_736594156374800_1800613681_n

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